技術者が罪に問われた事件・2018年・略式命令
Wizard Bible事件
Wizard Bible事件(英語名 Wizard Bible case)は、セキュリティの技術を解説するウェブマガジンWizard Bibleの運営者が不正指令電磁的記録提供罪に問われた事件です。2018年3月に略式命令で罰金50万円となり、運営者は正式な裁判を求めずに納めました。裁判所が中身を審理した判決はありません。
要点
- 立場セキュリティの技術を解説するウェブマガジンWizard Bibleの運営者
- 問われた罪不正指令電磁的記録提供罪
- 結論2018年3月に略式命令で罰金50万円となり、運営者は正式な裁判を求めずに納めました。裁判所が中身を審理した判決はありません。
- かかった年数最初の捜査と同じ年に結論
問題とされたこと
ウェブマガジンに載った寄稿の記事のプログラム(相手のサーバーにコマンドを実行させる内容)がウイルスに当たるとされ、それを公開したことが、ウイルスを人に提供した罪に問われました。
経過
2018年3月から2019年6月24日までの記録。日付は出典が示す細かさで載せています。
- 2018.03
運営者が略式起訴され、不正指令電磁的記録提供罪で罰金50万円の略式命令を受ける
- 2018.04
運営者が、閉鎖に追い込まれたと告知。一部の記事が罪に当たるとされ、家宅捜索で機器を押収され、問題の記事は削除したと説明
- 2018.04.22
Wizard Bibleが閉鎖される
- 2018.11.21
NHKが、運営者が罰金50万円を納めていたと報じる。運営者はパソコンを押収されて仕事に支障が出たことなどから、早く終わらせたかったと話したと伝えられた
- 2019.06.24
立命館大学の上原哲太郎教授が、デジタル・フォレンジック研究会のコラムで事件化に疑問を示す
争点
この罪は、他人のパソコンで無断で動かす目的があって初めて成り立ちます。上原哲太郎教授は、作者に使う目的がはっきりしない段階のプログラムが載っていることで管理人を罪に問えるのか疑問があり、サイトの運営者は本でいえば出版社の立場で、表現の自由の面からも議論があると書きました。情報法制研究所の高木浩光氏は、記事を読んだ人に悪用の目的があったことが立証されておらず、不当な検挙だと批判しました。運営者は略式命令を受け入れたので、裁判所の判断は示されていません。
その後
- 運営者は閉鎖の告知で、警察とは問題の記事を削除すれば運営を続けられることになったが、検察に存続の案を退けられたと説明しました。これは運営者の説明で、検察の説明は公表されていません。
- 上原教授は、サイトの閉鎖によって、研究者がウイルスに関わるコードを公表したり交換したりすることをためらうようになると指摘しました。
出典
- Wizard Bible 閉鎖の告知(保存版) Wizard Bible運営者(本人の告知)・2018-04-20
- Wizard Bible閉鎖、検察からの圧力か 財経新聞・2018-04-25
- 「Wizard Bible」管理人、ウイルス公開の疑いで略式起訴 財経新聞・2018-11-23
- コインハイブ事件、最高裁で無罪に 男性「心底安堵しています」戦い振り返る 弁護士ドットコムニュース・2022-01-20
- ウイルス罪の解釈と運用はどこが「おかしくなっている」のか TECH.ASCII.jp・2019-05-27
- 第569号コラム「ウイルス罪の運用が最近変な方向に行ってないか?」 デジタル・フォレンジック研究会・2019-06-24
最終確認日 (2026年10月24日)
監修 平原尚樹(株式会社BlueAI 代表取締役CEO、ソフトウェアエンジニア、Google Cloud Architect)