技術者が罪に問われた事件
日本で、ソフトウェアの開発者、研究者、サイトの管理者、ふつうの利用者が、書いたもの、動かしたもの、公表したものを理由に警察の捜査を受けた事件を、年代順にまとめました。結論は判決と当局の公表のとおりに書き分けています。無罪、起訴猶予、略式命令はそれぞれ別の結論です。
結論の内訳(10 件のうち)
最初の捜査から結論まで
帯の左端が捜査の年、右端が結論の年- ACCS事件
有罪 - Winny事件
無罪 - 原田ウイルス事件
有罪 - 岡崎市立中央図書館事件
起訴猶予 - イカタコウイルス事件
有罪 - PC遠隔操作事件の誤認逮捕
誤認逮捕 - Coinhive事件
無罪 - Wizard Bible事件
略式命令 - アラートループ事件
起訴猶予 - 生成AIでランサムウェアを作った事件
有罪
刑事罰が科されたそれ以外2011年7月 ウイルス作成罪の施行
2011年にできたウイルス作成罪
法務省の説明から- 2011年6月に成立した刑法の改正で、正当な理由がないのに、他人のパソコンで実行させる目的でウイルスを作ったり人に渡したりする罪(不正指令電磁的記録に関する罪)ができ、7月14日に施行されました。刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
- 法務省は、ウイルス対策ソフトの開発や試験のために、自分のパソコンや承諾を得たパソコンで動かすウイルスを作る場合は罪にならず、それをはっきりさせるために「正当な理由がないのに」という条件を入れたと説明しています。
- 見つけたウイルスを、研究や対策ソフトの更新に役立ててもらうために、ウイルスだと明らかにして研究機関や対策ソフトの会社に渡す場合も、罪にならないと説明しています。
- 作った人も知らないうちに生じるプログラムの誤り(バグ)は、使う人が避けられないものとして受け入れていると考えられる限り、ウイルスには当たらないと説明しています。ただし、不具合を十分に知った人が、あえて他人に害を与えようと事情を知らない人をだまして使わせた場合は罪になり得るとし、それは実際にはほとんど考えられないとしています。
出典 法務省「いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪について(保存版)」、法務省「いわゆるサイバー刑法に関するQ&A」、法務省「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(保存版)」
事件の一覧
古い順-
2004〜2005年有罪
ACCS事件
当時京都大学の研究員だった男性が不正アクセス禁止法違反に問われた事件です。2005年3月に東京地裁が懲役8か月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡し、控訴の取り下げで確定しました。
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2004〜2011年無罪
Winny事件
ファイル共有ソフトWinnyの開発者で、当時東京大学の助手だった金子勇氏が著作権法違反の幇助に問われた事件です。一審は罰金150万円の有罪、二審は無罪となり、2011年12月に最高裁が検察の上告を退けて無罪が確定しました。
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2008年有罪
原田ウイルス事件
ウイルスを作ってWinnyに流した大学院生が著作権法違反と名誉毀損に問われた事件です。2008年5月に京都地裁が懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。ウイルスを作ったこと自体は罪に問われていません。
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2010年起訴猶予
岡崎市立中央図書館事件
図書館の新着図書の情報を自分用に集めるプログラムを作った、ウェブ制作会社を営む男性が偽計業務妨害に問われた事件です。2010年6月に名古屋地検岡崎支部が起訴猶予としました。のちに図書館は、閲覧の障害の本当の原因は図書館システムにあったと認めました。
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2010〜2012年有罪
イカタコウイルス事件
原田ウイルス事件の有罪判決で執行猶予中だった元会社員が器物損壊に問われた事件です。一審の東京地裁は懲役2年6か月の実刑とし、2012年3月に東京高裁が一審を取り消して懲役2年4か月を言い渡しました。
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2012年誤認逮捕
PC遠隔操作事件の誤認逮捕
遠隔操作のウイルスに感染したパソコンの持ち主4人が威力業務妨害などに問われた事件です。4つの警察が4人全員の誤認逮捕を認めて謝罪し、2012年12月に捜査の検証結果を公表しました。
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2018〜2022年無罪
Coinhive事件
自分のサイトを運営していたウェブデザイナーが不正指令電磁的記録保管罪に問われた事件です。2022年1月に最高裁が二審の有罪判決を取り消し、無罪が確定しました。5人の裁判官の全員一致です。
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2018年略式命令
Wizard Bible事件
セキュリティの技術を解説するウェブマガジンWizard Bibleの運営者が不正指令電磁的記録提供罪に問われた事件です。2018年3月に略式命令で罰金50万円となり、運営者は正式な裁判を求めずに納めました。裁判所が中身を審理した判決はありません。
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2019年起訴猶予
アラートループ事件
ネットの掲示板にURLを書き込んだ中学生1人と成人の男性2人が不正指令電磁的記録供用未遂の疑いに問われた事件です。男性2人は書類送検され、2019年5月に神戸地検が起訴猶予としました。中学生は補導され、その後の扱いは公表されていません。
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2024年有罪
生成AIでランサムウェアを作った事件
ITの専門知識はないとみられると報じられた男性が不正指令電磁的記録作成罪と、詐欺、詐欺未遂、犯罪収益移転防止法違反に問われた事件です。2024年10月に東京地裁が、これらの罪をまとめて懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました(求刑は懲役4年)。