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BlueAI セキュリティ

ガイド・AI と新しい攻撃

プロンプトインジェクション対策。AI エージェントで起きることと会社の守り方

AI エージェントは、メールやウェブページ、ファイルを読んで仕事を進めます。その中に仕込まれた指示に AI が従ってしまうのがプロンプトインジェクションです。公表された事例と、公的機関や AI 各社の指針から、会社の守り方を整理しました。

要点

  • 起きること AI エージェントが読み込んだメールやウェブページ、ファイルに仕込まれた指示に従い、社内の情報を外へ送ったり、頼んでいない操作をしたりします。
  • 前提 IPA は技術的な対策で完璧なものは知られていないとし、英国 NCSC も SQL インジェクションのようには完全に緩和できない可能性があると述べているため、被害を小さくする設計が中心になります。
  • 守り方 AI に渡す権限とつなぐデータを必要な分だけにし、送信や購入などの重要な操作は人が承認し、外部の文章を指示と分けて扱い、入力と操作の記録を残します。

最終確認日 (出典はページの最後)

AI エージェントで起きること

プロンプトインジェクションは、AI への入力によって、AI が意図しない動きや出力をしてしまう弱点です(OWASP)。利用者が自分の入力で起こす直接型と、AI がウェブページやファイルなど外部から読み込んだ内容に指示が含まれている間接型があります。

AI エージェントに外部の文章を読ませる会社で、特に問題になるのは間接型です。NIST は、間接型は利用者ではなく第三者が仕掛けるもので、多くの場合は利用者の側が被害を受けると説明しています。AI がメールを要約する、ウェブで調べる、リポジトリのファイルを読む、といった仕事をするたびに、外部の文章が AI に届きます。OpenAI は、プロンプトインジェクションを対話型 AI に特有の、人をだます攻撃(ソーシャルエンジニアリング)の一種と位置づけています。人をだますフィッシングの文面が、人ではなく AI に向けられる形です。

IPA は「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織向け 3 位に「AI の利用をめぐるサイバーリスク」を初めて選び、解説書で間接プロンプトインジェクションについて「技術的対策で完璧なものは知られていません」と書いています。英国の NCSC(国家サイバーセキュリティセンター)も、今の大規模言語モデルはプロンプトの中で指示とデータの境目を持たないため、SQL インジェクションのようには完全に緩和できない可能性があると述べています。

公表された事例

製品の提供元が脆弱性として公表したものを並べました。どちらも Microsoft は、公表の時点で悪用は確認していないと記載しています。

製品と番号公表起こりえたこと深刻度と対応
Microsoft 365 Copilot「EchoLeak」CVE-2025-32711Microsoft、2025年6月11日メールなどに含まれる見えない指示を AI に読み込ませ、利用者の操作なしに秘密情報を外部へ送らせる(IPA の解説)Microsoft の評価は緊急、CVSS 9.3。利用者側の対応は不要
GitHub Copilot と Visual Studio CVE-2025-53773Microsoft、2025年8月12日開発者の端末で、攻撃者のコードを実行される。発見者は、プロンプトインジェクションから端末の乗っ取りにつながると報告したMicrosoft の評価は重要、CVSS 7.8。更新の適用が必要

AI 各社は、自社の試験の数字も公表しています。Anthropic は、ブラウザを操作する AI に 29 の攻撃場面、123 件の試験を行い、対策なしでは攻撃の成功率が 23.6% だったものを、対策を加えて 11.2% に下げたと発表しました。2025年11月には、別の試験(攻撃側が環境ごとに 100 回試せる条件)の結果を示したうえで、成功率 1% でも意味のあるリスクが残り、プロンプトインジェクションの影響を受けないブラウザ操作 AI はないと書いています。2 つの数字は条件の違う試験のもので、そのまま比べられるものではありません。OpenAI も、受信箱に仕込まれたメールを読んだ AI が、頼まれていない退職のメールを送ってしまう例を、社内の試験で見つけて対策したと公表しました。どちらも実際の被害ではなく、各社の試験の結果です。

防ぐより、届く範囲を小さくする

Microsoft は、すべてのプロンプトインジェクションを止められることを前提にせず、一部が成功しても利用者の被害にならないようにシステムを設計すると説明しています。仕込まれた指示が AI に届いても、権限と人の承認で被害を小さくし、記録で怪しい動きを見つけます。

010203041234外部のメールや文書読み込む内容に指示が仕込まれるAI エージェント権限とつなぐデータを絞る送信や購入などの操作人が承認してから実行操作の記録入力と操作を残して見直す
  1. 1
    入口外部のメールや文書

    AI エージェントが読むメールやウェブページ、ファイルに、攻撃者の指示が紛れ込む。完全には見分けられない前提で考える。

  2. 2
    絞るAI エージェント

    AI に渡す権限とつなぐ社内データを、仕事に要る分だけにする。指示に従ってしまっても、届く範囲が小さくなる。

  3. 3
    止める送信や購入などの操作

    外部への送信、購入、公開、削除などの重要な操作は、人が内容を確かめて承認してから実行させる。

  4. 4
    残す操作の記録

    AI の入力と出力、ツールの操作を記録し、頼んでいない送信や操作がないかを見直す。

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    入口外部のメールや文書

    AI エージェントが読むメールやウェブページ、ファイルに、攻撃者の指示が紛れ込む。完全には見分けられない前提で考える。

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    絞るAI エージェント

    AI に渡す権限とつなぐ社内データを、仕事に要る分だけにする。指示に従ってしまっても、届く範囲が小さくなる。

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    止める送信や購入などの操作

    外部への送信、購入、公開、削除などの重要な操作は、人が内容を確かめて承認してから実行させる。

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    残す操作の記録

    AI の入力と出力、ツールの操作を記録し、頼んでいない送信や操作がないかを見直す。

会社の守り方

  1. 任せる仕事を決めるNCSC は、残るリスクを受け入れられないシステムは、大規模言語モデルを使うのに向いていない可能性があると述べています。お金を動かす、顧客の個人情報を外に出す、といった操作を AI だけで完結させる使い方は避けます。
  2. 権限とつなぐデータを絞るOWASP は、モデルの権限を目的に必要な最小限にするよう挙げています。Microsoft は、間接型の攻撃は AI が利用者と同じ権限で動くことを前提にしているため、細かな権限とアクセス制御で確実に抑えられると説明しています。AI セーフティ・インスティテュートの評価観点ガイドも、AI エージェントが必要な情報とツールだけに触れられるかを確かめる項目を挙げています。
  3. 重要な操作は人が承認するOWASP は、権限の要る操作に人の確認を挟むよう挙げています。OpenAI の AI エージェントは購入などの重要な操作の前に止まって確認を求め、Anthropic のブラウザ操作 AI も、公開、購入、個人情報の共有の前に利用者に確かめます。承認する人は、確認の画面の中身を読んでから承認します。
  4. 外部の文章を指示と分けるOWASP は、外部の内容を分けて印を付けるよう挙げ、NIST は信頼できるデータとできないデータを AI が区別しやすくする工夫(spotlighting)を紹介しています。ただし Microsoft は、この工夫を確率的な対策と位置づけています。NCSC は、禁止の語句を並べて止めるやり方には注意するよう書いています。
  5. 記録を残して見直すNCSC は、怪しい動きを見つけられるだけの記録を残すよう勧め、その例として AI の入力と出力のすべてや、ツールの使用、API の呼び出しを挙げています。
  6. 試験するOWASP は攻撃を想定した試験を挙げ、AI セーフティ・インスティテュートも、攻撃を想定したテストデータでの動作試験と、危険な操作のときに人が止められるかの確認試験を挙げています。

対策の効き方の違い

Microsoft は、AI の判断に頼らない決定的な対策のほうが、確かな保証があるため望ましいとしています。

対策AI の判断に頼るか出典の説明
権限とアクセスを絞る頼らないMicrosoft は、細かな権限とアクセス制御で確実に抑えられるとする。OWASP、AI セーフティ・インスティテュートも挙げる
重要な操作の前に人が承認する頼らない(人が判断する)OWASP、Microsoft、OpenAI、Anthropic が挙げる
外部の文章を区別する工夫頼るMicrosoft は確率的な対策と位置づける。NIST、OWASP も挙げる
攻撃の文章を見分ける検知頼るMicrosoft は検知の道具を多層防御の一つに置く。NCSC は止められると主張する製品に注意を促す

日本の会社の対策の状況

サイバーセキュリティ連盟が 2026年10月21日に公表した民間の調査(Web サイトや Web サービスの運営に関わる 500 名が回答)では、生成 AI や AI エージェントの利用に伴う対策として、プロンプトインジェクションなど AI 特有の攻撃への検証をしているのは 20.6%、AI エージェントの外部システムなどへの権限の制限は 18.0% でした。最も多い対策は社内ルールやガイドラインの整備で 38.6% です。回答者の範囲が限られた調査で、国内企業全体の割合ではありません。

社員が勝手に使う AI の扱いはシャドーAI のガイドにまとめています。開発者が使う AI のコード支援ツールは、取り込んだリポジトリのファイルに仕込まれた指示でも動くため、他人のコードを取り込むときのサプライチェーン攻撃と同じ注意が要ります。

よくある質問

プロンプトインジェクションは、対策製品を入れれば防げますか。
製品だけでは防げません。英国 NCSC は、プロンプトインジェクションは製品や機器で完全には緩和できない残るリスクだとし、止められると主張する製品には注意し、どう減らすかを理解している製品を選ぶよう勧めています。
直接と間接のプロンプトインジェクションは、どう違いますか。
直接は、利用者自身が AI への入力で動作を変えるものです。間接は、AI がウェブページやファイルなど外部から読み込んだ内容に指示が含まれているものです。NIST は、間接型は利用者ではなく第三者が仕掛け、多くの場合は利用者の側が被害を受けると説明しています。
Copilot や ChatGPT のような製品の弱点は、誰が直しますか。
製品の弱点は提供元が直します。たとえば Microsoft 365 Copilot の EchoLeak(CVE-2025-32711)は、Microsoft が利用者側の対応は不要として公表しました。一方で、AI にどの社内データとどの操作を許すかは、使う会社が決めることです。
社員が AI エージェントを使うときに、気をつけることは何ですか。
OpenAI は、ログインした状態での利用をできるだけ絞ること、確認の画面をよく読んでから承認すること、幅広く任せずに具体的に指示することを勧めています。

関係するページ

このページが根拠に使っている手口、グループ、事例のページです。

出典

最終確認日 (2026年10月24日)

監修 平原尚樹(株式会社BlueAI 代表取締役CEO、ソフトウェアエンジニア、Google Cloud Architect)