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生成AI の情報漏洩 公開事例と防ぎ方

生成 AI をめぐる情報漏洩を、当事者の企業か当局が自ら公表した事例だけに絞って並べました。報道だけで当事者の公表がないものは載せていません。どの事例も、公表に書かれていることと書かれていないことを分けています。

要点

  • 起きた場所 公表された事例では、社員が禁止された AI に個人情報を入力した、AI サービスの不具合で他人の情報が見えた、AI の周りのクラウドや委託先から漏れた、の3つの場所で情報が外に出ています。
  • 国内の事例 パナソニック オペレーショナルエクセレンスは2026年10月23日、プロジェクトのメンバーが会社が利用を禁止している外部の生成 AI サービスに、従業員や元従業員とその家族の個人情報を含むデータをアップロードしたと公表しました。
  • 防ぎ方 使ってよい AI と入力してはいけない情報を決め、入力を学習に使わない会社契約の AI に寄せ、AI が読める社内データの権限と、委託先やクラウドの設定を見直します。

最終確認日 (出典はページの最後)

情報が外に出た 3 つの場所

当事者が公表した事例を、データが通る順に並べると、社員と委託先の入力、AI サービスそのもの、AI の周りのクラウドや委託先、の 3 つの場所に分かれます。

010203123社員と委託先の入力禁止された AI に個人情報AI サービス不具合で他人の情報が見える周りのクラウドと委託先共有設定と外部ツールから
  1. 1
    漏れた場所社員と委託先の入力

    社員が会社の禁止している外部の生成 AI に個人情報を含むデータを上げた事例と、委託先の従業員が個人情報を生成 AI に参照させた事例が公表されている。

  2. 2
    漏れた場所AI サービス

    2023年3月、ChatGPT で、ライブラリの不具合により他の利用者の会話のタイトルや支払い関連の情報が見えた可能性があると OpenAI が公表した。

  3. 3
    漏れた場所周りのクラウドと委託先

    AI 研究で公開したリンクの権限が広すぎた事例(Microsoft)と、分析ツールの提供元が不正アクセスを受けた事例(OpenAI)が公表されている。

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    漏れた場所社員と委託先の入力

    社員が会社の禁止している外部の生成 AI に個人情報を含むデータを上げた事例と、委託先の従業員が個人情報を生成 AI に参照させた事例が公表されている。

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    漏れた場所AI サービス

    2023年3月、ChatGPT で、ライブラリの不具合により他の利用者の会話のタイトルや支払い関連の情報が見えた可能性があると OpenAI が公表した。

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    漏れた場所周りのクラウドと委託先

    AI 研究で公開したリンクの権限が広すぎた事例(Microsoft)と、分析ツールの提供元が不正アクセスを受けた事例(OpenAI)が公表されている。

当事者が公表した事例

数字は公表に書かれたとおりです。「わかっていないこと」は、公表に書かれていない点です。

事例公表何が起きたか場所わかっていないこと
パナソニック オペレーショナルエクセレンス同社、2026年10月23日人事情報システムの導入プロジェクトのメンバーが、会社が利用を禁止している外部の生成 AI サービスに、個人情報を含むデータをアップロードした。対象は従業員約7万5千人、元従業員約17万8千人(社員番号、住所、電話番号、メールアドレス。氏名は含まない)と、従業員の家族約5万5千人、元従業員の家族約2万6千人(緊急連絡先の氏名、住所、電話番号、メールアドレス)。学習に使う機能は無効で、公開や不正利用は確認されていない。2026年9月29日に個人情報保護委員会へ報告社員の入力使われた AI サービスの名前、アップロードの日、発覚の経緯
RIZAP(特定保健指導の委託先)IHIグループ健康保険組合、2026年9月2日委託先の従業員が、データ抽出の作業中に特定保健指導の対象者の個人情報を生成 AI に参照させたことが、本人の申告でわかった。この健康保険組合の分は 210 名。AI サービス事業者以外の第三者に見られた可能性と、学習に使われた可能性はないと確認したとしている委託先の入力ほかの委託元の分を含めた全体の人数、使われた AI サービスの名前
ChatGPT(OpenAI)OpenAI、2023年3月24日3月20日、オープンソースのライブラリ redis-py の不具合で、一部の利用者に他の利用者の会話のタイトルが見えた。ある 9 時間に利用していた ChatGPT Plus 会員の 1.2% について、氏名、メールアドレス、支払い先の住所、カードの種類と下 4 桁、有効期限が他の人に見えた可能性がある。カード番号の全体は見えていないAI サービスの不具合実際に他の人に見られた人数。OpenAI は「極めて少ない」と説明
Microsoft の AI 研究チームMicrosoft、2023年9月18日社員がオープンソースの AI 学習モデルの公開に関わる中で、公開の GitHub リポジトリに、権限が広すぎる共有用の鍵(SAS トークン)つきの保存場所の URL を載せた。元社員 2 名の端末のバックアップと、その 2 名の社内の Teams メッセージが見える状態だった。顧客データは含まれていない周りのクラウドの設定露出したデータの量(Microsoft は示していない。発見した Wiz は 38TB と報告)、ほかの第三者が見たかどうか
OpenAI の分析ツール提供元(Mixpanel)OpenAI、2025年11月26日OpenAI が使っていた分析ツールの提供元 Mixpanel が不正アクセスを受け、API の一部利用者と、ヘルプセンターに問い合わせたか platform.openai.com にログインしていた一部の ChatGPT 利用者の、氏名、メールアドレス、おおよその位置、利用環境などが持ち出された(ChatGPT 利用者の件は 2025年12月19日の追記)。OpenAI のシステムへの侵入ではなく、会話、API の内容、パスワード、支払い情報は含まれない。OpenAI は Mixpanel の利用をやめた委託先(外部ツール)影響を受けた人数

漏れたことは確認されていませんが、漏れうる弱点として公表されたものもあります。Microsoft 365 Copilot の EchoLeak(CVE-2025-32711)は、Microsoft が 2025年6月11日に深刻度 Critical(緊急)として公表し、すでに対処済みで利用者の対応は不要、公表の時点で悪用は確認していないとしています。AI に読ませるメールなどに仕込まれた指示を使うもので、プロンプトインジェクション対策で詳しく扱っています。

当局の対応

AI サービスの事業者に対して当局が動いた例です。漏洩の認定とは限らないため、それぞれの位置づけを書いています。

当局と日付相手内容
イタリア Garante、2023年3月30日OpenAIイタリアの利用者のデータの処理を、即時に一時制限した。理由に、3月20日の会話と支払い情報のデータ侵害、学習のための法的根拠がないこと、年齢確認がないことを挙げた
個人情報保護委員会(日本)、2023年6月2日公表OpenAI6月1日付けで、本人の同意なく要配慮個人情報を取得しないことなどを求める注意喚起を行った。あわせて、生成 AI を使う事業者への注意点を公表した
イタリア Garante、2024年12月20日発表OpenAI2023年3月のデータ侵害を当局に通知しなかったことなどを理由に、1,500 万ユーロの制裁金を科したと発表した。ただし、ローマ裁判所が 2026年3月18日に公表した判決でこの処分への異議が認められ、決定は Garante のサイトから一時的に外されている
イタリア Garante、2025年1月30日DeepSeek会社からの回答が不十分だとして、イタリアの利用者のデータの処理を緊急に制限し、調査を始めた
韓国 個人情報保護委員会、2025年2月17日と4月24日DeepSeek委員会の勧告に DeepSeek が同意し、2月15日に韓国でアプリの配信を止めた。4月には、利用者がプロンプトに入力した内容を中国の Beijing Volcano Engine Technology に送っていたこと、学習への利用を断る手段がなかったことなどを指摘し、是正を勧告した

防ぎ方

  1. 使ってよい AI と入力してはいけない情報を決めるパナソニック オペレーショナルエクセレンスの事例は、利用を禁止していた AI に個人情報が上げられたものです。決まりがあっても起きるため、決まりを講習で伝え、守られているかを確かめます。決まりの書き方は生成AI の社内ガイドラインに、社員が勝手に使う AI の見つけ方はシャドーAI のガイドにまとめています。
  2. 入力を学習に使わない会社契約の AI に寄せるOpenAI は業務向けプランと API で、Microsoft は組織向けの Microsoft 365 Copilot で、入力を基盤モデルの学習に使わないと公表しています。個人情報保護委員会も、個人データを入力するなら、提供事業者が機械学習に使わないことなどを十分に確認するよう求めています。ただし学習に使わなくても、事業者の手元に一定の期間残る場合があります。パナソニック オペレーショナルエクセレンスの公表では、削除後も 30 日間は事業者が保持すると説明されています。
  3. 委託先にも同じ決まりを求めるRIZAP の事例は、健康保険組合から業務を受けた委託先で起きました。委託の契約で生成 AI の扱いを決め、委託先経由の侵入と同じく、委託先の管理を見直します。
  4. AI が読める社内データの権限を見直すMicrosoft は、組織向けの Microsoft 365 Copilot は、利用者が少なくとも閲覧の権限を持つ組織のデータだけを表示すると説明しています。裏を返せば、共有の設定が広すぎるファイルは AI からも見つけやすくなります。
  5. 周りのクラウドと外部ツールを見直すMicrosoft の事例は、AI の研究データを共有するための鍵の権限が広すぎたことが原因でした。共有リンクの権限と期限はクラウドの設定不備として点検し、分析ツールなど外部に渡すデータも必要な分だけにします。
  6. 入力してしまったときの手順を決めておく公表された事例では、報告、チャットの履歴と手元のデータの削除、AI サービス事業者への確認(学習への利用、保持の期間、第三者の閲覧)、個人情報保護委員会への報告が行われています。誰に、何を、いつまでに伝えるかを、インシデント対応の手順として決めておきます。悪意のある持ち出しは内部不正として別に備えます。

よくある質問

ChatGPT に入力した情報は、ほかの人の回答に出てきますか。
入力が学習に使われるかどうかと、サービスの不具合の両方が関わります。OpenAI は、ChatGPT Business や Enterprise などの業務向けプランと API では、既定で業務データを学習に使わないと公表しています。パナソニック オペレーショナルエクセレンスの事例では、学習に使う機能が無効だったため、他の利用者の回答に使われることはないと説明しています。一方、2023年3月の ChatGPT のように、学習とは関係のない不具合で、他の利用者の会話のタイトルや支払い関連の情報が見えた例もあります。
サムスンの社員がソースコードを入力した件は、なぜ載っていないのですか。
このページは、当事者か当局が自ら公表した事例だけを載せています。サムスン自身の公表を確認できなかったため、事例として扱っていません。
間違って個人情報を入力してしまったら、どうすればよいですか。
まず社内の決まりで定めた担当に報告します。公表された事例では、パナソニック オペレーショナルエクセレンスが個人情報保護委員会へ報告し、メンバーがチャットの履歴と手元のデータを削除し、AI サービス事業者に学習への利用や保持の期間を確かめています。
会社契約の AI なら、情報漏洩は起きませんか。
起きないとは言えません。OpenAI の2023年3月の事例はサービス側の不具合で、2025年11月の事例は OpenAI が使っていた分析ツールの提供元への不正アクセスでした。契約の種類だけでなく、AI が読めるデータの範囲や委託先の扱いも見直します。

関係するページ

このページが根拠に使っている手口、グループ、事例のページです。

出典

最終確認日 (2026年10月24日)

監修 平原尚樹(株式会社BlueAI 代表取締役CEO、ソフトウェアエンジニア、Google Cloud Architect)