ガイド・AI と新しい攻撃
シャドーAI とは。社員が勝手に使う AI の見つけ方と止め方
社員が自分のアカウントで生成 AI を業務に使い、会社がそれを知らない状態をシャドーAI と呼びます。なぜ起きるのか、どう見つけ、どう止めるかを、IPA などの公的機関の資料と、調査を行った当事者の発表から整理しました。
要点
- 定義 シャドーAI は、会社の許可や管理を受けないまま、社員が個人で使っている AI サービスを業務に使うことで、IPA は持ち出し禁止のデータを入力すれば情報漏えいにつながると説明しています。
- 見つけ方 ファイアウォールやプロキシの通信の記録と CASB で AI サービスへの通信を洗い出し、あわせて社員に使っている AI を申告してもらいます。
- 止め方 禁止するだけでなく、入力データを学習に使わない会社契約の AI を用意し、入力してはいけない情報と個人アカウントでの業務利用の制限を社内の決まりに書きます。
最終確認日 (出典はページの最後)
シャドーAI とは
シャドーAI は、会社の許可や管理を受けないまま、社員が個人で使っている AI サービスを業務に使うことです。IPA は「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織向け 3 位に「AI の利用をめぐるサイバーリスク」を初めて選び、その解説書でこの語を使っています。職場に AI サービスがない場合などに、社員が個人的に使っている AI を業務に使うことがあり、持ち出しが禁止されている業務データを入力すれば情報漏えいにつながる、という説明です。会社が社員の個人アカウントでの利用を把握できないことも、リスクとして挙げています。
IBM は、情報システム部門の承認や監督を受けずに AI のツールやアプリが使われることをシャドーAI と定義しています。承認のないソフトウェアやサービス全般を指すシャドーIT のうち、AI に絞った呼び方です。
悪意のある持ち出しである内部不正とは違い、シャドーAI の多くは仕事を早く終わらせたいという善意から起きます。それでも、データが会社の管理の外に出る点は同じです。
数字で見るシャドーAI
調査ごとに、誰を数えたかが違います。日本の公的機関が社員のシャドーAI の利用率を直接調べた数字は、確認した範囲では見つかりませんでした。
| 調査 | 数字 | 誰を数えたか |
|---|---|---|
| Microsoft・LinkedIn 2024 Work Trend Index | AI を使う人の 78% が、自分で用意した AI ツールを職場に持ち込んでいる。中小企業では 80%。 | 31 か国の 31,000 人。分母は職場で AI を使う人 |
| IBM Cost of a Data Breach Report 2025 | 5 社に 1 社が、シャドーAI による侵害を報告した。AI を管理するかシャドーAI を見つける方針を持つのは 37%。 | 2024年3月から2025年2月に侵害を受けた世界の 600 組織 |
| 同上 | シャドーAI の利用が多い組織は、少ないか、ない組織より、侵害の費用が平均 67万ドル高かった。 | 同上 |
| 総務省 令和7年版 情報通信白書 | 生成 AI の活用方針を定めている日本企業は 49.7%(2024年度調査)。中小企業では「方針を明確に定めていない」が約半数。 | 日本の企業の回答(企業規模別の内訳あり) |
同じ Work Trend Index では、職場で AI を使う人の 52% が、最も重要な仕事に AI を使っていることを認めたがらないと答えています。会社から見えないところで使われやすい、ということです。
見つけて止める 3 つの層
シャドーAI の対策は、社員の端末で起きることを、社外への通信の出口で見つけ、会社が認めた AI に寄せる、の 3 つの層で考えると整理できます。
- 1起きること社員の端末
会社が把握していない個人アカウントの AI サービスに、持ち出し禁止の業務データが入力される。
- 2見つける社外への通信の出口
ファイアウォールやプロキシの記録と CASB で、どの AI サービスがどの部署から使われているかを洗い出す。
- 3止める会社が認めた AI
入力データを学習に使わない会社契約の AI を用意し、入力してはいけない情報を決めて、未許可の AI への通信は監視するか止める。
- 1起きること社員の端末
会社が把握していない個人アカウントの AI サービスに、持ち出し禁止の業務データが入力される。
- 2見つける社外への通信の出口
ファイアウォールやプロキシの記録と CASB で、どの AI サービスがどの部署から使われているかを洗い出す。
- 3止める会社が認めた AI
入力データを学習に使わない会社契約の AI を用意し、入力してはいけない情報を決めて、未許可の AI への通信は監視するか止める。
見つけ方
IPA は、システム管理者の対策として、IT 資産と構成を管理し、通信の記録や CASB(クラウドサービスの利用を見える化して制御する仕組み)で AI サービスの利用状況を把握し、管理されていない AI サービスの利用を見つけることを挙げています。
- 通信の記録から洗い出すファイアウォールやプロキシの記録で、AI サービスへの通信がどの部署から出ているかを見ます。Microsoft Defender for Cloud Apps のような製品は、端末やファイアウォールの記録からクラウドアプリの利用を一覧にし、アプリごとに許可か不許可かを付けられます。
- 外部アプリの連携を見直す「Microsoft でサインイン」のような連携で、社員が自分で外部アプリに権限を与えていることがあります。Microsoft Entra ID は既定で、管理者の同意が要らない権限なら利用者が自分で同意できる設定です。Microsoft は、確認済みの発行元のアプリに限って利用者の同意を認めるよう勧めています。
- 社員に申告してもらう使っている AI と使い道を一覧にしてもらいます。AI を使っていると言い出しにくい人が多いため、最初の棚卸しではとがめずに、なぜその AI を使ったのかを聞きます。答えが、会社が用意すべき AI の要件になります。
止め方
IBM は、社員は承認された手段が足りない、または遅いと感じると、未承認の AI に向かうと説明しています。禁止だけで終わらせず、代わりに使える AI を用意するのが先です。
- 使ってよい AI を用意する入力データを学習に使わない契約の AI を選びます。たとえば OpenAI は、ChatGPT Business や ChatGPT Enterprise、API の入力と出力を、既定ではモデルの学習に使わないと公表しています。個人情報保護委員会も、個人データを入力するなら、提供事業者が機械学習に使わないことなどを十分に確認するよう求めています。
- 入力してはいけない情報を決めるAI 事業者ガイドライン(総務省・経済産業省、第1.2版)は、AI を使う事業者に、個人情報や機密情報を不適切に入力しないよう注意を払うことを求めています。顧客の個人情報、取引先から預かった資料、未公開の財務情報のように、具体的な例で書きます。
- 個人アカウントでの業務利用を制限するIPA は経営者層の対策として、未許可・未認可の AI サービスの禁止、個人アカウントでの業務利用の制限、違反したときの対応の明確化、入力データを学習対象から外すオプトアウト設定の徹底、契約時の約款の確認を挙げています。
- 未許可の AI への通信を監視し、必要なら止めるDefender for Cloud Apps では、不許可にしたアプリを監視するか止められます。Microsoft は、不許可にしたアプリの利用者に通知し、安全な代わりのアプリを勧める運用を説明しています。
- 講習で伝えるIPA は、社内の秘密情報を安易に入力しないこと、AI の出力に誤り(ハルシネーション)があると理解することを、講習で伝えるよう挙げています。
会社が認めた AI でも、外部のメールやウェブページを読ませる使い方ではプロンプトインジェクションの対策が要ります。また、AI に渡したデータを置くクラウドの共有設定を誤ると、クラウドの設定不備と同じ形で外から見えてしまいます。
よくある質問
- シャドーAI とシャドーIT はどう違いますか。
- シャドーIT は、情報システム部門の承認を受けずに使われるソフトウェアや機器、サービス全般を指します。シャドーAI は、そのうち AI のツールや使い方に絞った呼び方です(IBM の解説)。
- 無料版の生成 AI に業務の情報を入力すると、法律違反になりますか。
- 入力する情報と、AI の提供事業者がそれをどう扱うかによります。個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は個人情報保護法に違反する可能性があるとし、提供事業者が機械学習に使わないことなどを十分に確認するよう求めています。
- 生成 AI を全面禁止すれば、シャドーAI はなくなりますか。
- なくなるとは限りません。IBM は、社員は承認された手段が足りない、または遅いと感じると未承認の AI に向かうと説明しています。IPA も未許可の AI の禁止とあわせて、使ってよい AI サービスの検討と利用規定の整備を挙げています。
- 会社が契約した AI なら、何を入力してもよいですか。
- よくありません。AI 事業者ガイドライン(総務省・経済産業省)は、AI を使う事業者に、個人情報や機密情報を不適切に入力しないよう注意を払うことを求めています。会社契約の AI でも、入力してよい情報の範囲は決まりに書いておきます。
関係するページ
このページが根拠に使っている手口、グループ、事例のページです。
出典
- 情報セキュリティ10大脅威 2026 IPA(独立行政法人情報処理推進機構)・2026-01-29
- 情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編](PDF 16〜18ページ) IPA(独立行政法人情報処理推進機構)・2026-03-12
- What Is Shadow AI? IBM・2026-03-05
- IBM Report: 13% Of Organizations Reported Breaches Of AI Models Or Applications, 97% Of Which Reported Lacking Proper AI Access Controls(Cost of a Data Breach Report 2025) IBM・2025-07-30
- AI at Work Is Here. Now Comes the Hard Part(2024 Work Trend Index) Microsoft、LinkedIn・2024-05-08
- 令和7年版 情報通信白書 企業におけるAI利用の現状 総務省・2025
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(別添1) 個人情報保護委員会・2023-06-02
- AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(PDF 41ページ) 総務省・経済産業省・2026-03-31
- Enterprise privacy at OpenAI OpenAI・2026-01-08
- Tutorial: Discover and manage shadow IT(Microsoft Defender for Cloud Apps) Microsoft・2023-01-29
- Govern discovered apps(Microsoft Defender for Cloud Apps) Microsoft・2026-07-03
- Configure how users consent to applications(Microsoft Entra ID) Microsoft・2025-06-15
最終確認日 (2026年10月24日)
監修 平原尚樹(株式会社BlueAI 代表取締役CEO、ソフトウェアエンジニア、Google Cloud Architect)