ガイド・ランサムウェアと恐喝
ランサムウェア対策 中小企業が先にやること
ランサムウェアの被害は大企業だけの話ではありません。警察庁の令和7年(2025年)の統計から、中小企業がどこから入られ、何に困ったかを読み、先にやる対策を5つに絞りました。どの対策にも、根拠にした統計のページと、同じ失敗をした事例を添えています。
要点
- 被害の実態 警察庁によると、2025年のランサムウェアの被害報告は226件で、そのうち143件が中小企業、侵入経路に回答した92件のうち61件が VPN 機器でした。
- 先にやること VPN などの入口を更新して不要な接続を止め、多要素認証を入れ、バックアップをネットワークから切り離し、権限を絞って監視し、被害時の手順と連絡先を決めておきます。
- バックアップ 復元の結果に回答した99件のうち、バックアップから元に戻せたのは20件だけで、戻せなかった理由に回答した72件のうち48件はバックアップも暗号化や消去をされていたため、切り離して保管し、戻せるかを試しておくことが欠かせません。
最終確認日 (出典はページの最後)
数字で見る中小企業の被害(2025年)
警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年3月)から引きました。アンケートの項目ごとに回答した組織の数が違うため、「何件のうち何件」で書いています。ランサムウェアは、IPA の「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向けの 1 位(11年連続)です。
| 項目 | 令和7年(2025年)の数字 | 資料のページ |
|---|---|---|
| 被害の報告件数 | 226 件。中小企業 143 件、大企業 64 件、団体等 19 件 | 13〜14 ページ、図表7 |
| 侵入経路 | 回答 92 件のうち、VPN 機器 61 件、リモートデスクトップ 19 件、不審なメールや添付ファイル 2 件、その他 10 件 | 統計編(PDF 136 ページ) |
| 入口の機器の更新 | 侵入経路とされる機器について回答 71 件のうち、未適用のセキュリティパッチがあったのは 40 件 | 統計編(PDF 146 ページ) |
| ウイルス対策ソフト | 検出について回答 89 件のうち、64 件は検出しなかった | 統計編(PDF 148 ページ) |
| バックアップからの復元 | 回答 99 件のうち、元に戻せたのは 20 件、戻せなかったのは 79 件 | 統計編(PDF 141 ページ) |
| 戻せなかった理由 | 回答 72 件のうち、バックアップの暗号化・消去が 48 件、運用の不備が 19 件、その他 5 件 | 統計編(PDF 142 ページ) |
| 復旧の期間と費用 | 調査・復旧費用の総額について回答 89 件のうち、46 件が 1,000 万円以上。復旧の期間は、回答した組織のうち 1 か月未満で復旧したのが 5 割強にとどまる | 14 ページ、統計編(PDF 137〜138 ページ) |
| 事業継続計画(BCP) | サイバー攻撃を想定した BCP を策定済みの組織は約 18% | 17 ページ |
2026年9月に出た令和8年上半期の資料では、2026年1〜6月の被害報告は 123 件で、半期としては統計を取り始めた令和2年下半期以降で最多でした。中小企業が約 6 割を占め、復旧に総額 1,000 万円以上かかった組織は全体の 6 割でした(9〜11 ページ)。
警察庁は、インターネットにさらされた機器から遠隔で入り込む手口が多く、メールの添付ファイルからの感染は少なくなっていると説明しています。攻撃者は、修正されていない脆弱性、漏れた認証情報や簡単なパスワード、設定の不備を使って入り込みます。
手を打つ 4 つの層
攻撃は、入口から入り、アカウントを使って社内のサーバに広がり、最後にバックアップまで暗号化します。どの層で止めても被害は小さくなります。
- 1入口VPN などの入口
侵入経路に回答した92件のうち61件が VPN 機器、19件がリモートデスクトップだった。入口の機器に更新を当て、使っていない接続は止める。
- 2認証アカウント
外から入れるアカウントに多要素認証を入れ、初期のパスワードや簡単なパスワードをやめる。例外にしたアカウントが使われた事例がある。
- 3広がりを止める社内のサーバ
管理者の権限を必要な人だけにし、ウイルス対策ソフトに加えて EDR などで監視する。検出について回答した89件のうち64件は、ウイルス対策ソフトが検出しなかった。
- 4戻すバックアップ
復元の結果に回答した99件のうち、戻せたのは20件。バックアップをネットワークから切り離して保管し、戻す手順を試しておく。
- 1入口VPN などの入口
侵入経路に回答した92件のうち61件が VPN 機器、19件がリモートデスクトップだった。入口の機器に更新を当て、使っていない接続は止める。
- 2認証アカウント
外から入れるアカウントに多要素認証を入れ、初期のパスワードや簡単なパスワードをやめる。例外にしたアカウントが使われた事例がある。
- 3広がりを止める社内のサーバ
管理者の権限を必要な人だけにし、ウイルス対策ソフトに加えて EDR などで監視する。検出について回答した89件のうち64件は、ウイルス対策ソフトが検出しなかった。
- 4戻すバックアップ
復元の結果に回答した99件のうち、戻せたのは20件。バックアップをネットワークから切り離して保管し、戻す手順を試しておく。
中小企業が先にやる 5 つ
- VPN などの入口を更新し、使っていない接続を止める警察庁は、主な侵入経路である VPN 機器などは速やかな対応が必要だとし、セキュリティパッチが公開されたら速やかに当てるよう求めています。JPCERT/CC は、インターネットからつながるシステムや機器を洗い出し、業務に要らないものは止めるよう勧めています。名古屋港の事例では、保守用 VPN に接続元の制限がなく、VPN 機器の公表済みの脆弱性も残っていました。大阪急性期・総合医療センターの事例とイセトーの事例も、VPN から入られています。手口はVPN・エッジ機器の脆弱性悪用にまとめています。
- 外から入れるアカウントに多要素認証を入れる警察庁は、初期パスワードや簡単な文字列を避け、多要素認証や IP アドレスによる接続の制限を組み合わせるよう求めています。アスクルの事例では、例外的に多要素認証を入れていなかった委託先向けの管理者アカウントが使われました。事例から言えるのは、例外のアカウントを作らないほうがよいということです。手口は認証情報の悪用と多要素認証の回避にあります。
- バックアップを切り離して保管し、戻せるかを試す警察庁は、バックアップをこまめに取り、ネットワークから切り離してオフラインで保存するなど、暗号化されないように備えるよう勧めています。IPA は、書き換えられない仕組み(WORM)などでバックアップ自体を守ることと、バックアップから戻す訓練を挙げています。複数の場所に分けて持つ考え方は、用語集のバックアップの3-2-1ルールにまとめています。戻せなかった理由に「運用の不備」が 19 件あるように、取っているだけでは戻せないことがあります。
- 権限を絞り、監視する警察庁は、アカウントの権限と触れる範囲を必要最小限にすると被害の広がりを防げるとし、ウイルス対策ソフトや EDR、ネットワークの監視製品を入れて最新に保つよう求めています。入られたあとに社内で広がる手口は横展開にまとめています。
- 被害時の手順と連絡先を決めておく警察庁は、感染した端末を LAN ケーブルを抜くか無線を切ってネットワークから切り離し、調査に必要なログが消えないよう電源は切らないよう求めています。そのうえで、最寄りの警察署かサイバー犯罪相談窓口に通報します。連絡先は BCP(事業継続計画)に書いておくと、被害のときに連携しやすくなると警察庁は説明しています。
はじめの一歩として、IPA の SECURITY ACTION の一つ星「情報セキュリティ6か条」には、2026年3月から「バックアップを取ろう!」が加わりました。宣言を出発点に、上の 5 つへ進めます。
身代金と警察への通報
警察庁は、身代金について、犯罪グループの活動資金になることが懸念され、暗号化されたデータの復号が保証されるわけではないと被害者に説明しています。IPA は原則として身代金を支払わずに復旧するよう、JPCERT/CC は攻撃者の要求には応じずバックアップから復旧するよう勧めています。
警察は、初動の助言や復号ツールの提供などの支援ができる場合があります。2025年7月には、関東管区警察局サイバー特別捜査部が FBI の協力を得て、Phobos とその関連組織 8Base のランサムウェア(Phobos/8Base)で暗号化されたデータを復号するツールを開発しました。国際共同捜査の結果、2025年の報告件数は LockBit が 31 件から 19 件に、Phobos/8Base が 23 件から 1 件に減ったと警察庁は報告しています。警察から被害の公表を求めることはありません。
入口が VPN ではなく、社員のアカウントが盗まれたことが根本の原因と推測されたKADOKAWA の事例のように、入り方はさまざまです。ほかの事例はランサムウェアのテーマのページから引けます。
よくある質問
- 身代金を払えば、データは戻りますか。
- 保証はありません。警察庁は、犯罪グループの活動資金になることが懸念され、暗号化されたデータの復号が保証されるわけではないと被害者に説明しています。IPA は原則として身代金を支払わずに復旧するよう、JPCERT/CC は攻撃者の要求には応じずバックアップから復旧するよう勧めています。
- 警察に通報すると、被害が公表されますか。
- 警察から公表を求めることはないと警察庁は説明しています。被害情報の保秘は徹底するとし、初動の助言や、復号ツールの案内ができる場合があるとしています。
- ウイルス対策ソフトを入れていれば防げますか。
- それだけでは足りません。警察庁の統計では、ウイルス対策ソフトの検出について回答した89件のうち64件で、ランサムウェアは検出されませんでした。入口の対策とバックアップ、EDR などの監視を組み合わせます。
- 感染に気づいたら、まず何をしますか。
- 感染した端末を LAN ケーブルを抜くか無線を切ってネットワークから切り離し、電源は切らずに、最寄りの警察署かサイバー犯罪相談窓口に通報します。電源を切ると、調査に必要なログが消えるおそれがあります。
関係するページ
このページが根拠に使っている手口、グループ、事例のページです。
出典
- 令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(特集Ⅱ 13〜18ページ、統計編 PDF 132〜148ページ) 警察庁サイバー警察局・2026-03
- 令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(9〜11ページ) 警察庁サイバー警察局・2026-09
- ランサムウェアPhobos/8Baseによる暗号化被害データに関する復号ツールの開発について 警察庁・2025-07-17
- ランサムウェア被害防止対策 警察庁・ページに日付の表示なし
- 情報セキュリティ10大脅威 2026 IPA(独立行政法人情報処理推進機構)・2026-01-29
- 情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編](PDF 10〜12ページ) IPA(独立行政法人情報処理推進機構)・2026-03-12
- 侵入型ランサムウェア攻撃を受けたら読むFAQ JPCERT コーディネーションセンター・2026-06-18
最終確認日 (2026年10月24日)
監修 平原尚樹(株式会社BlueAI 代表取締役CEO、ソフトウェアエンジニア、Google Cloud Architect)