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BlueAI セキュリティ

ガイド・ランサムウェアと恐喝

ランサムウェアの感染経路と侵入経路 警察庁の統計で見る入口

ランサムウェアはどこから入ってくるのか。警察庁が被害を受けた組織に毎年たずねている「感染経路」の答えを、令和3年から令和7年まで5年分と令和8年上半期の分で並べました。経路ごとに、このサイトの手口のページと、実際にその経路で入られた事例をつないでいます。

要点

  • 一番多い経路 警察庁によると、2025年にランサムウェアの被害を受けて侵入経路に回答した92件のうち、61件が VPN 機器、19件がリモートデスクトップで、この2つで8割を超えました。
  • メールは少ない 不審なメールや添付ファイルからの侵入は2025年は92件のうち2件で、警察庁は、インターネットに出ている機器から遠隔で入り込む手口が多くを占め、メールの添付ファイルによる感染は少なくなっていると説明しています。
  • 入られる原因 攻撃者は、更新していない機器の脆弱性、漏れた認証情報や簡単なパスワード、設定の不備を使って入るため、外から入れる機器とアカウントを洗い出し、更新と多要素認証を先に済ませます。

最終確認日 (出典はページの最後)

侵入経路の5年の推移

警察庁は、ランサムウェアの被害を受けた組織にアンケートで侵入経路をたずね、毎年の「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」に載せています。下の表は、令和7年版の統計編124ページ(PDF 136ページ)のグラフの件数です。答えた組織の数が年ごとに違うので、「何件のうち何件」で読みます。

年回答した組織VPN 機器リモートデスクトップ不審なメールや添付ファイルその他
令和3年(2021年)76 件41 件15 件5 件15 件
令和4年(2022年)102 件63 件19 件9 件11 件
令和5年(2023年)115 件73 件21 件6 件15 件
令和6年(2024年)100 件55 件31 件2 件12 件
令和7年(2025年)92 件61 件19 件2 件10 件
5年の合計485 件293 件105 件24 件63 件

5年すべてで VPN 機器が最も多く、リモートデスクトップが続きます。2つを合わせると、令和7年は92件のうち80件でした。警察庁は令和7年版の本文(15ページ)で、侵入経路は VPN 機器が6割以上を占めると書いています。令和6年版の本文(9ページ)も、VPN やリモートデスクトップ用の機器からの侵入が8割以上を占め、その原因に ID やパスワードがとても簡単だったこと、要らないアカウントが管理されずに残っていたことを挙げています。

2026年9月に出た令和8年上半期の資料では、2026年1〜6月に回答した36件のうち、VPN 機器が18件、リモートデスクトップが9件、その他が9件でした(統計編143ページ、PDF 156ページ)。本文(10ページ)は VPN 機器が約5割としています。半年分で回答が少ないため、年の数字とそのまま比べるのは控えます。

入口を多い順に並べた図

2025年の92件を多い順に並べました。上の2つ、インターネットに出ている VPN 機器とリモートデスクトップで、8割を超えます。

010203041234VPN 機器92件のうち61件リモートデスクトップ92件のうち19件その他92件のうち10件不審なメールや添付ファイル92件のうち2件
  1. 1
    1番目VPN 機器

    更新していない脆弱性や、漏れた ID とパスワードで入られる。5年すべてで最も多い経路。

  2. 2
    2番目リモートデスクトップ

    外に開いたままのリモートデスクトップに、盗んだか推測したパスワードで入られる。

  3. 3
    3番目その他

    警察庁の資料は中身を分けていない。事例では、拠点のネットワーク機器や盗まれた社員のアカウントから入られている。

  4. 4
    4番目不審なメールや添付ファイル

    添付ファイルやリンクから感染させる手口。5年の合計でも485件のうち24件と少ない。

  1. 1
    1番目VPN 機器

    更新していない脆弱性や、漏れた ID とパスワードで入られる。5年すべてで最も多い経路。

  2. 2
    2番目リモートデスクトップ

    外に開いたままのリモートデスクトップに、盗んだか推測したパスワードで入られる。

  3. 3
    3番目その他

    警察庁の資料は中身を分けていない。事例では、拠点のネットワーク機器や盗まれた社員のアカウントから入られている。

  4. 4
    4番目不審なメールや添付ファイル

    添付ファイルやリンクから感染させる手口。5年の合計でも485件のうち24件と少ない。

経路ごとの手口と、実際に入られた事例

IPA の「情報セキュリティ10大脅威 2026」の解説書(10〜11ページ)は、ランサムウェアの手口として、機器の脆弱性を使う、盗んだ認証情報や外に開いたリモートデスクトップから不正にアクセスする、ウェブサイトやメールから感染させる、ダークウェブで売られている侵入の手段を使う、の4つを挙げています。警察庁の区分に合わせて、このサイトの手口のページと事例をつなぎました。

経路使われる弱点手口のページこの経路で入られた事例
VPN 機器更新していない脆弱性、漏れた ID とパスワード、接続元の制限がない設定VPN・エッジ機器の脆弱性悪用イセトー、関通、岡山県精神科医療センター、名古屋港、Colonial Pipeline
リモートデスクトップ外に開いたままの接続、簡単なパスワード認証情報の悪用大阪急性期・総合医療センター(委託先の VPN から入り、常時つながったリモートデスクトップで病院のサーバへ)
盗まれたアカウント多要素認証のない遠隔接続や管理者アカウント認証情報の悪用、多要素認証の回避アスクル、KADOKAWA、Change Healthcare
委託先や拠点保守用の接続、管理の届かない拠点の機器委託先経由の侵入アサヒグループ、大阪急性期・総合医療センター、アスクル
不審なメールや添付ファイル添付ファイルを開かせる、リンクを踏ませる標的型攻撃メール警察庁の統計では2025年は92件のうち2件

警察庁の4つの区分と、事例の入られ方は1対1には対応しません。たとえば盗まれたアカウントは、VPN 機器やリモートデスクトップの認証を通るために使われます。警察庁は、認証情報の漏えいや簡単なパスワードで、ネットワーク機器やリモートデスクトップの認証を破られて入られる事例が多数あると説明しています。

VPN 機器

インターネットから社内に入るための機器です。警察庁は、ネットワーク機器の脆弱性を使って入られる事例が多数あり、特に主要な侵入経路である VPN 機器は速やかな対応が必要だとしています。岡山県精神科医療センターの事例では、保守用の SSL-VPN 装置の ID とパスワードが推測できるもので、2018年の設置から脆弱性が直されていませんでした。名古屋港の事例では、保守用 VPN に接続元の制限がなく、ID とパスワードが合えば誰でもつなげました。関通の事例は VPN 装置から、イセトーの事例は VPN からの不正アクセスで入られました。関わったとされるグループは、関通が Akira(関通の社長がセミナーで説明したと報道された)、イセトーが 8Base(犯行声明が報道されただけで、会社は攻撃者名を公表していない)で、根拠の出典は各事例のページにあります。

リモートデスクトップ

離れた場所から PC やサーバを操作する仕組みです。IPA は、意図せず外に公開されているリモートデスクトップなどのポートを使った不正アクセスを手口に挙げています。令和6年は100件のうち31件がこの経路で、5年で最も多い年でした。大阪急性期・総合医療センターの事例では、委託先の給食センターから、常時つながっていたリモートデスクトップで病院のサーバに入られました。

その他(拠点の機器、盗まれたアカウント)

警察庁の資料は「その他」の中身を分けていません。事例では、アサヒグループはグループ内の拠点にあるネットワーク機器を経由して入られました。会社は攻撃者名を公表しておらず、Qilin の犯行声明が報道されただけです(出典は事例のページ)。アスクルは、例外的に多要素認証を入れていなかった委託先向けの管理者アカウントの ID とパスワードを使われました。KADOKAWAは、フィッシングなどで社員のアカウント情報を盗まれたことが根本の原因と推測されていますが、経路と方法はわかっていません。

不審なメールや添付ファイル

警察庁は、標的型攻撃メールなどの添付ファイルによる感染は少なくなっていると説明しています。それでも IPA は、添付ファイルにマルウェアを仕込む手口と、メールのリンクからランサムウェアを仕込んだウェブサイトに誘う手口を挙げています。メールが入口になる手口は標的型攻撃メールとフィッシングにあります。

メールが最多という調査との違い

JIPDEC と ITR が2025年3月に発表した「企業IT利活用動向調査2025」では、ランサムウェアに感染した企業がたずねられた侵入経路で、「メールやその添付ファイル」が28.3%と最多でした。「VPN やネットワーク機器の脆弱性」が20.8%、「リモートデスクトッププロトコルの悪用」が19.9%で続きます。国内企業1,110社の、IT 戦略や情報セキュリティの担当者への調査です。

警察庁の数字は、警察に被害を届けた組織へのアンケートで、ランサムウェアの被害に絞っています。たずねた相手と方法が違うため、どちらかを誤りとは言えません。このページでは、警察に届いた被害の入口として警察庁の数字を主に使い、JIPDEC と ITR の数字は別の調査として分けて示します。

感染と侵入、ノーウェアランサム

警察庁の資料は「感染経路」という見出しで、攻撃者が組織のネットワークに入った経路をたずねています。警察庁は、インターネットに露出した箇所から攻撃者が遠隔操作でネットワークの内部に侵入する手口が多くを占めると説明しています。入ったあとに社内で広がる手口は横展開にまとめています。

データを暗号化せずに盗んで金銭を要求する手口は、警察庁はノーウェアランサムと呼び、ランサムウェアとは別に数えています。2025年は17件でした(令和7年版 統計編120ページ、PDF 132ページ)。

経路を塞ぐ順番

  1. 外から入れる機器とアカウントを洗い出すVPN 機器、リモートデスクトップ、保守用の接続、拠点や委託先の機器も数えます。令和6年版の警察庁の資料は、海外の支社などの機器を管理できずにそこから入られた事例と、試験的に作ったアカウントの簡単な認証情報で入られた事例を挙げています。
  2. 機器に更新を当てる令和7年の統計では、侵入経路とされる機器について回答した71件のうち、40件に当てていないセキュリティパッチがありました(統計編、PDF 146ページ)。
  3. 多要素認証を入れ、例外を作らない簡単なパスワードや初期のパスワードをやめ、外から入れるアカウントすべてに多要素認証を入れます。
  4. 使っていない接続を止めるリモートデスクトップを外に開いたままにしない、使い終わった保守用の接続やアカウントを消します。
  5. ログを取っておく警察庁は、ネットワーク機器や端末のログは調査の大事な手がかりになるとして、日頃から取っておくよう勧めています。

中小企業が先にやる対策はランサムウェア対策 中小企業が先にやることに、ほかの事例はランサムウェアのテーマのページにまとめています。

よくある質問

ランサムウェアの感染経路で一番多いのは何ですか。
VPN 機器です。警察庁の統計では、2025年に侵入経路に回答した92件のうち61件が VPN 機器でした。令和3年から令和7年の5年すべてで、VPN 機器が最も多い経路です。
メールの添付ファイルを開いただけで感染しますか。
その経路もありますが、いまは少数です。警察庁の統計で不審なメールや添付ファイルからの侵入は、2025年は92件のうち2件でした。IPA は、添付ファイルやメール内のリンクから感染させる手口も挙げているので、メールへの注意も続けます。
メールが一番多いという調査を見ました。どちらが正しいのですか。
調べ方が違います。JIPDEC と ITR の「企業IT利活用動向調査2025」は、国内企業1,110社の担当者にたずねた調査で、感染した企業の答えでは「メールやその添付ファイル」が28.3%で最多でした。警察庁の数字は、警察に被害を届けた組織へのアンケートです。どちらも記事の中で出典を分けて示しています。
感染経路はどうやって調べますか。
機器や端末のログから調べます。警察庁は、同じ経路で入られて再び被害に遭うおそれがあるとして感染原因の調査を求め、ログは調査の大事な手がかりになるので日頃から取っておくよう勧めています。被害に遭ったら、端末をネットワークから切り離し、電源は切らずに警察に通報します。

出典

最終確認日 (2026年10月24日)

監修 平原尚樹(株式会社BlueAI 代表取締役CEO、ソフトウェアエンジニア、Google Cloud Architect)